【プロ直伝!マネー教室】 “老後資金不足問題” と対策①~いくら足りない?~

プロ直伝!マネー教室(第1回)老後資金不足問題と対策~いくら足りない?~

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2019年に話題になった「老後資金2,000万円不足問題」から約5年経ち、状況は改善されているのでしょうか?今回は、取得可能な公表データを用いて試算をし、当時からどのように変わっているのかを解説していきます。

「老後資金2,000万円不足問題」ってなんだっけ?

2019年に話題になった「老後資金2,000万円不足問題」を皆さん、覚えていらっしゃいますか?
もう忘却の彼方という方も多いかもしれません。
簡単におさらいすると、「65歳以上の無職の夫婦2人が平均的な老後生活を送るのに、公的年金だけだと30年間で2,000万円ほど足りないよ」という内容でした。
<参考>金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」(2019年6月)

当時、このレポートをまとめたのが金融庁のワーキング・グループだったため、マスコミがこぞって取り上げ、かなり世間をザワつかせたわけですが、逆にそのおかげで、「将来に備え、自分で資産をつくっていかなきゃ!」 という意識が高まったという点では、いいきっかけを提供してくれたのではないかと思います。
私のところにも、「どれぐらい必要なの?」「2,000万円でいいの?」、「どうやって準備すればいいの?」といったお問い合わせが増えました。
さて、あれから5年。最新のデータでみると、状況はどのように変わっているでしょうか?

まずは、取得可能な最新の公表データを用いて2019年当時と同様の試算を行い、2025年版の老後資金不足問題を検証してみたいと思います。いったいどのような結果が出るのか、楽しみですね。

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平均的な老後の生活費は月額約??円

まず気になるのは、「老後の生活費ってどれぐらいかかるの?」ということだと思います。
モデルケースとして、65歳以上の無職の夫婦2人(以下「夫婦高齢者無職世帯」といいます)の暮らしに必要な生活費の平均値について見てみましょう。

毎年総務省が公表している「家計調査年報」によると、2023年の夫婦高齢者無職世帯の生活費は、平均すると282,497円でした。
ご参考までに、消費支出(25万959円)の内訳をご紹介しますが、この他に「直接税」や「社会保険料」などの「非消費支出」も3万1,538円必要となります。

  月平均額(円) 構成比(%)
消費支出合計 250,959 100.0
食料 72,930 29.1
住居 16,827 6.7
光熱 ・ 水道 22,422 8.9
家具 ・ 家事用品 10,477 4.2
被服及び履物 5,159 2.1
保健医療 16,879 6.7

交通 ・ 通信

30,729 12.2
教育 5 0.0
教養娯楽 24,690 9.8
その他の支出 50,839 20.3

<参考>総務省 家計調査年報(家計収支編)「2023年 家計の概要」

住居費は、持ち家か賃貸かの違いや、住む地域などによって金額が大きく異なってきます。夫婦高齢者無職世帯では持ち家の割合が高いため、平均値が約1.7万円と低くなっていますが、賃貸に住んでいる世帯や住宅ローンが残っている世帯では、住居費がもっとかかるということを考慮しておく必要があります。

また、保健医療費につきましても、人によって健康状態は異なりますし、年齢が上がってくると病気やケガのリスクも高まってきますので、世帯によって大きく異なってきます。

さらに、気になる介護費については、「その他の消費支出」に含まれていますが、介護する側・される側の状況や利用する施設などにより、かかる費用が大きく異なってきます。

上記の数値はあくまでも平均値であることに注意が必要です。

それに対して老後の収入は・・・??

ここまで夫婦高齢者無職世帯が平均的な生活を送るのにかかる費用について説明してきました。次に夫婦高齢者無職世帯の平均的な収入について見てみたいと思います。

こちらも前述の総務省「家計調査年報」のデータとなりますが、2023年の夫婦高齢者無職世帯の収入は、平均すると244,580円でした。内訳は以下の通りです。

  月平均額(円) 構成比(%)
実収入合計

244,580

100.0
社会保障給付 218,441

89.3

勤め先収入 4,975

2.0

事業 ・ 内職収入 4,703 1.9
仕送り金 860 0.4
その他の収入 15,601 6.3

<参考>総務省 家計調査年報(家計収支編)「2023年 家計の概要」

ご覧の通り、収入の中心は「社会保障給付」主に公的年金ですが、公的年金の支給額はそれまでの働き方や配偶者の状況などにより大きく異なってきます。上記の約21.8万円という数値は、2023年に夫婦高齢者無職世帯に支給された公的年金の平均値ということになります。
現役時代の働き方や配偶者の状況がどのような世帯が、この水準の支給額になるのか、例示してみますと、夫が会社員として厚生年金に38年間(平均標準報酬額46万円)、妻が専業主婦として国民年金に38年間加入していたケースで、世帯の公的年金の月額は約22.5万円となります。
<参考>日本FP協会 「くらしとお金のワークブック」(2024年4月改定)

夫婦ともに自営業者だった場合や、夫婦ともに会社員だった場合、独身の自営業者だった場合や、独身の会社員だった場合など、ケースにより公的年金の支給額は大きく異なってきます。

また、収入の平均値24.4万円という金額には、無職世帯と言いつつも、パートや内職等からの収入が含まれますし、「その他の収入」の中には保有資産からの利息や配当などの収入が含まれています。
ご自身に照らし合わせて試算をしてみて、将来そういった収入が見込めるのか、といった点も考慮する必要があります。

平均的な老後生活を送るのに30年で約??円不足

ここまでで、最近の公表データをもとに、2025年版老後資金不足問題について試算し、夫婦高齢者無職世帯の平均的な支出(主に生活費)と収入について見てきました。
平均的な生活費は約28.3万円で収入は約24.4万円(公的年金だけだと約21.8万円)。
つまり、平均的な老後生活を送るのに、毎月約3.8万円(公的年金だけだと約6.4万円)の収入が不足していることがわかります。
これを65歳から95歳までの30年間で計算すると・・・
なんと約1,365万円(公的年金だけだと約2,300万円)の資金不足という結果になります。
いかがでしょう?「これは大変だ」とお感じになられたでしょうか?
それとも「恐れるに足らないな」とお感じになられたでしょうか?

実際の2019年の報告では、公的年金だけではなく、その他の収入も含めた収入を用いて試算した結果が約2,000万円不足ということでしたので、今回の試算に当てはめると約1,365万円不足という結果との対比となります。「2,000万円不足 ⇒ 1,365万円不足」ですので、状況は当時より改善傾向が見られます。これは2019年以降、毎年の年金額改定で支給額が前年比プラスになった年が多く、公的年金支給額が増えたことが不足額改善の要因の一つと考えられます。

では、ゆとりある老後生活を送ろうとすると・・・

せっかくなので、「平均的な老後生活」ではなく「ゆとりある老後生活」を送ろうとすると、いったいどれくらい必要になるのかについても見てみましょう。

生命保険文化センターが2023年に公表した2022年度の「生活保障に関する調査」によると、「老後を夫婦2人で暮らしていくうえで、日常生活費として月々最低いくらぐらい必要だとお考えですか」という質問に対し、回答の平均値は月額23.2万円という結果でした。

さらに、「経済的にゆとりのある老後生活を送るためには、今お答えいただいた金額のほかに、あといくらぐらい必要だとお考えですか」という質問に対し、回答の平均値は月額14.8万円という結果でした。

「老後の最低日常生活費」に「老後のゆとりのための上乗せ額」を加えた金額が、「ゆとりある老後生活費」を表していると考えられますので、合計額は月額37.9 万円ということになります。
<参考>生命保険文化センター「2022年度 生活保障に関する調査」

先ほどの一般的な夫婦高齢者無職世帯の収入の平均値約24.4万円(公的年金だけだと約21.8万円)を用いて、ゆとりある老後生活を送るにはいくら資金が足りないかを試算してみると、毎月約13.5万円(公的年金だけだと約16.1万円)の収入が不足する計算になります。

これを65歳から95歳までの30年間で計算すると、約4,860万円(公的年金だけだと約5,800万円)の資金不足という結果になります。
いずれも平均値での試算となりますので、あくまでも目安として認識しておいていただければと思いますが、「これは大変だ」と感じられた方も多いのではないでしょうか?

最後までお読みいただいた方は、老後に向けてどのくらいの資金を準備すればいいかのイメージは湧いてきたかと思います。
次回は実際にどうやって資産づくりをしていけばいいのか、「資産づくりの基本」と「おすすめの資産づくりの方法」についてお話したいと思います。ぜひ、お楽しみに!

 

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久保 貴洋

この記事の著者 久保 貴洋

1993年に大和証券に入社し、資産運用営業や株式公開営業を担当。大和ネクスト銀行設立やファンドラップ企画にも従事。2019年からクレディセゾンへ出向し、連携ビジネスを企画・実施する傍ら、カード会員や社員向けのセミナー講師や資産運用相談も行う。日本証券アナリスト協会検定会員

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